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「そろそろ自分の年が幾つかもアヤしくなってきたなあ」
 忙しさに紛れてうっかり零してしまったそんな呟きを耳聡く拾った骸から、「年の数のバラ」を贈られるようになって数年。今年も朝一番に部屋に届けられた秋咲きの白バラを数えて、更に指折り自分の年も確認して小さく舌打ちする。ちっ。間違っていれば文句の言い様もあるのに。
「…そーいや、あいつは幾つになったんだ?」


「そんなの、お前に何の関係があるんだ?」
「ソウデスヨネー」
 素直に教えてくれるようなタマなら、決して短くはない付き合いの中で耳にする機会もあった筈なのだ。初めて逢った時の印象を久し振りに思い返してみるが、あのナリで既に百戦錬磨のヒットマンだったのだから見た目の印象などアテに出来る筈がない。そして今、ソファの肘掛から嫌味な程長い足をはみ出してだらしなく寝そべる姿は、数年前からちっとも変わっていない。
 時の流れを歪められたアルコバレーノにも毎年決まって訪れる誕生日。365分の1の確立でこいつを表すひとつの記号となった10月13日。幾度となく迎えたであろうその日をいつから数えなくなったのか。
「全く…骸も律儀な事だな」
 うんざりした口調で、テーブルの上に置かれたバラを1本ずつ手に取っては放り投げる。リボーンが横たわるソファの周りは、いつの間にか真っ白いバラで埋め尽くされていた。
「お前、いつまでコレをやらせるつもりだ?」
「え?ずっと、だけど?」
 骸の気が済むまで、とまでは言わずににっこり笑うと、
「このダメツナが…」
 低く呟かれた声に混じる憐憫に気づかないフリで、足元のバラを拾い上げて花びらに唇を寄せた。
「だってさ、愛されてるって実感出来るじゃないか」

 屋敷の庭に毎年増えていくバラの株。今年植えられた苗が美しい花を咲かせる頃、オレは何度目かの誕生日を迎えるだろう。そして、その日の意味を決して忘れる事のないよう、骸は年に1本ずつ増えていくバラの花を贈るのだろう。
 世界の脅威となり得るトゥリニセッテ。その暴威を防ぐべく、ボンゴレリングの力を封じる媒介となったオレの体は成長を止めた。時の流れに取り残されたオレが迷う事のないよう贈られる花に込められた骸の思いに気づいたその時、オレはやっと自分がどれだけ愛されてたか気づいたんだ。

「アホか。お前らの下らない感傷に付き合わされる庭師の身にもなってみろ」
「ふふーん。羨ましいだろー。何ならオレからお前にバラを贈ろうか?」
 幾つになっても何度この日を迎えても、決して変わる事のない意味がこの日にあるのだと、お前だって判っているだろう?
「ほざけ、この道楽野郎が。屋敷中をバラだらけにするつもりか」
 毎年恒例となった2人合同の誕生会。贈られる言葉と笑顔が、どんなプレゼントよりもオレ達が生きてきた日々を祝福している。呪われた身であろうとも、確かに人として愛されて生まれてきたのだと教えてくれる。
 毎年増えていく花の数だけ想いが積み重なっていくのなら、年を取るのも悪くない…降り積もった雪のように床に広がるバラを掻き集めて抱き締めると、目を閉じて胸いっぱいに甘い香りを吸い込んだ。






リボさま+ツナはぴばーっ!/わんこ






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