WANTED!!



「まだ生きてたの?」
茶化す声と共に若々しい肢体がディーノに併走し、追い越す。
「な!…ふっざけんな!」
思い出しもしなかった雲雀恭弥が、ディーノの前を実に楽しそうに走っていく。
彼が何故ここにいるのか、考える前にディーノは口の端をつりあげた。
どうしてだろう。雲雀を前にすると、ディーノはどんな状況でも笑みを浮かべてしまう。ナリは大きくなったのに幼い頑なさを見つけてしまうからだろうか。二人がマシンガンの銃撃をかいくぐって小隊に飛び込むと、竜巻のように鞭がしなり、トンファーが唸る。赤い風が起こる度に膝をつく死体が増えていく。
「邪魔しないでくれる?」
「ボンゴレが襲われた」
背中合わせで立ち、すぐに次の小隊へ飛び込む。ディーノの頬は紅潮し実に楽しそうに鞭をふるう。部下を護るための鞭であり、大切な人を護るためのディーノの力。今、それと共に、一緒に戦う仲間を得て新しい活力を得ていた。雲雀も変型トンファーを視認できない速度で振りながら走り抜けていく。
「そう」
「今すぐ帰れ」
「このうまそうな群れを咬み殺してからね。それに」
雲雀のトンファーが振り上げられ、ハイネックの白い軍服の男が宙に舞う。
「ボスがいる限り、ウチは大丈夫だよ」
「おまっ…」
雲雀は伸びた黒髪から覗く切れ長の目を艶やかな笑みで飾り、血の旋風を巻き上げた。
ディーノは雲雀が綱吉のことをボスと呼ぶのを初めて聞いた。
二人が次々と敵を倒している間に、キャッバローネの防衛線が本格的に稼動した。やがて、敷地内から敵の姿が消えたことが確認され、対空、対地の迎撃準備も整い、ボンゴレとのホットラインも復活したことをロマーリオから報告される。
トンファーをふるって血を飛ばしながら恭弥はつまらなさそうに口の端を下げた。
「貴方を殺すのは僕だからね。忘れないでよ」
「わかってるさ、恭弥。だから」
綱吉を護ってくれ。
言葉の代わりに抱きしめる。
抱きしめ返す代わりに、雲雀は金髪にそっと顔を埋めた。ディーノ以外にはわからない返事のキス。
「並盛への足を用意しよう」
「莫迦だね。キャッバローネ如きに世話にはならないよ」
「頼む」
「一度でわかるよ」
現れた時と同じように雲雀は姿を消した。
ロマーリオがディーノの背後を護り屋敷内に入るように促す。
「…ボス、ひとまず着替えましょう。あと、恭弥は昨日から庭にいたんですが、知らなかったんですか?」
「ばっ!知らねーよ!なんで教えてくんねーんだよ!!」
「失礼ながら、ボスのベッドから黒髪がみつかってんですが」
「ええ?ゆーべ、俺一人で寝たぜ?」
「恐れながら、ボス…」
ロマーリオが笑いを押し隠して慇懃無礼に頭を下げて手鏡をディーノに渡す。映ったのは幾筋か血の跡が残る首筋の、ケガではない赤い痕の数々。
「あいつ!!!」
ディーノは手鏡を投げ捨てて雲雀の名前を叫ぶ。
全く気配を感じさせずに同じベッドに寝て、あまつさえ、なんかされたことも今まで気付かないなんて!!
「次に逢ったらぶっ殺してやる!!覚えてろよ!クソガキが!!」
がつがつ強く地面を踏みながら屋敷に向かうディーノ。その背後でロマーリオはやれやれ、と笑いながら血のにじむ煙草をくわえた。






ヒバードをおいて、雲雀さんはどこに行ったのかなぁ?という捏造/だい。






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