獄寺隼人の殺し方  プランB



仕切り直しで午後、会議室に集まる守護者たちとそれぞれのマフィオソーのトップ数人。同盟ファミリーのボスからホットラインが入っていた綱吉が遅れて到着した時には、部屋から賑やかな笑い声が漏れてきた。綱吉に付き添っている獄寺と顔を見合わせる。
「どうせ、リボーンだよ」
「獄寺さん、お待ちしていました!」
獄寺の部下が今や遅しと待っていたようで入り口で綱吉に会釈をして獄寺の手を引いて中に引き込んだ。中では様々な色の服や装飾品に溢れていた。言葉をなくす綱吉と獄寺に、獄寺の部下が様々な衣装をもってくる。
その向こう側、テーブルの上座で9代目が葉巻をふかしていた。
二人は一気に緊張するが、綱吉は気付いた。
「リボーン、何をするつもりなんだ?」
「9代目!?」
「言ったろ?ボンゴレ流『ホテル・デッレ・パルメの集会』だ。ツナ以外は全員変身して向かえ撃つぞ好きな衣装を選べ」
二人の同時の問いかけに9代目のコスプレ中のリボーンが9代目の重厚さそのままで応えた。声までそっくりで、獄寺は半信半疑のまま声が出ない。
コスプレ好きのヒットマンのセリフに再び周りも沸き立つ。
「獄寺さん、ピアニストですとやっぱ燕尾服ですかね!」
普段は頼りになる落ち着いた部下たちがはしゃぐ意味が見えた。そして、自分がキーパーソンということも。ただのピアニストになりきって、敵を欺けということか。
「ってめぇら、浮ついて…」
怒鳴る直前に黒い髪で視界を覆われる。怒鳴るために振り向くと山本が長い黒髪のカツラを獄寺にかぶせていた。獄寺を無視して調節する。 「一度黒髪って見たかったんだよな」
「なんのつもりだ、山本」
「小僧がな、おまえの銀髪はボスの右腕って知れ渡っているから髪の色変えねーとな、って言うからカツラは黒を選んだんだけど、他の色にする?」
流石の獄寺もリボーンには逆らえない。山本にカツラをつけられ=頭をなでられて妙に落ち着く。仕事中はこんな接触厳禁のお達しをしているのだが、周りの浮かれっぷりが伝染したのかおとなしくされるがままになる。
「ボス、どう?黒髪イケてるよな」
状況を理解して、唯一コスプレを免れている綱吉も獄寺の心情を想像して、仕方なく笑いを見せていた。
「うん。銀髪も綺麗だと思うけど、黒髪もすごくかっこいいと思うよ。で、山本はソレ何?」
燕尾服だ!いや、モーニングだ!と競う獄寺の部下を片手で抑え、どさくさに紛れてもう片方の腕で獄寺を背中から抱いている山本の格好も黒いスーツではなく、ウェイターのようだった。
「獄寺がピアニストなら、オレはギャルソンだなって」
「寿司職人の前にギャルソン姿になるとは思ってもいなかったよ。似合ってるよ」
「あ、寿司職人でも良かったけど、このままだとオレもバレちまうらしいから、違う髪型のカツラを被るらしいぜ」
「あぁそう…。雲雀さん、雲雀さんは?」
9代目コスプレのリボーンの横で静かにお茶を飲む雲雀と、雲雀の後ろに草壁他の部下達が静かに揃っていた。
「雲雀さんは何のコスプレをするんですか?」
「バカじゃない?僕がそんなことするわけないじゃない」
「ええー!そこでバレちゃいますよ!」
「だから、雲雀にはバックヤードの指揮をとってもらう」
あぁ、それが最善ですね、と綱吉は力なく答え、リボーンの横の席に座る。
「楽しそうでいいね」
「こういうファミリーがいいんだろ」
「そうだね」
「9代目こんにちは。お久しぶりです。10代目、今取り込んでいますか?」
やっとティーンエイジャーになったランボがリボンのついた箱を抱えて横に来た。背はだいぶ伸びたもののまだ線が細く、大きな目を黒い巻き毛が縁取っていて、数年前の面影はまるでない。細い指に不似合いなゴツい雷の守護者のリングをはめているもまだその才能は開花していない。
「ランボ、久しぶりだね。いつのまに来たの?」
「ツナ…ボスに持っていけってコレを」
リボンのついた箱をツナに渡すとリボーンが口を挟んできた。
「アホ牛、おまえをこっちで一週間預かることをボスに言っといた。それは、お前の衣装だ」
「ランボも参加させるの?」
「当たり前だ。一応守護者だからな」
100%コイツの趣味だ!と綱吉は今日何度目かのため息をついた。9代目の格好でリボーンの口調なのでランボはびっくりして目を見開いている。
「で、ランボにはどんな格好させんの?」
「俺のパートナーだ。お前のパートナーにはイーピンを呼んどいたからな」
「イーピン!?日本だろ?」
「観光がてら来させるさ。それとも京子やハルを出すか?それとも、ビアンキをお前がエスコートするか?」
ブンブンと綱吉は首を振る。今や堅気になりつつも殺し屋のイーピンを日本から呼んだ方が数倍マシだ。ランボはいまいち状況がわからないままイーピンと久しぶりに逢えるらしいことが嬉しくて、華やかに笑った。






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