愛とは、左の頬をぶたれたら、相手の右頬にキスをすることである。



 春が近づいているような柔らかい朝。
 全国紙コッリエーレ・デラ・セーラの地方面ではマフィアの抗争中の大量感電死の続報が大きく記事になっていた。優雅に午前のお茶を楽しんでいたシャマルは、プランツドールたちのさざめきが聞こえて、怪我人が目を覚ましたのを知る。
「……天国?」
 プランツドールに囲まれる中、全身をミイラのように包帯で巻かれた病人が呻き声と共につぶやいた。
「ブオンジョルノ。動こうとしてみろ」
 シャマルはプランツドールたちと一緒になって覗き込んで、ぼんやりとしたエメラルド色の瞳に声をかける。彼は動こう、と思っただけで全身を激痛にさいなまれ声なき叫びを上げる。
「悪かったな、そういうことでまだ地上だよ。おかえり、ランボ」
 激痛でエメラルド色の瞳を涙で潤ませてランボは唯一動かしてもあまり痛くない目をしばたかせた。リボーンと同じような白い肌の人形たちがランボを覗き込んでいる。物言わぬ人形のはずなのに、触りたくなるほど愛らしい。ボスがリボーンを触りたくなるのもわかるよ…リボーン!リボーンは!?
 ランボはぐるりと目を動かして自分を覗くプランツドール達から黒目の大きな愛らしくて小生意気なリボーンを探した。一目見たときからいないことは気付いていたのに、それでも必死に探す。
「リボーンはここさ」
 戻ってきたシャマルはランボの枕元のリボーンを抱え上げた。気付くとすぴーすぴーと寝息を立てている。どうやらどこも怪我はしていないようだ。安心するランボにシャマルは水を含んだ綿でランボの唇を湿らせた。
「おまえさん一度死んでんだ。最期、感電死してな。リボーンから連絡もらってオレが着いたときは黒こげでまだ煙を上げてたんだがな、念のために蘇生させたら止まってた心臓が動き出してな。お前だけひっぱってきたよ。おかげで一張羅が台無しだ。後で治療代も含めて倍額請求な」
 重病人に酷い、とランボは涙を見せる。
 マフィアだろー。金持ってんだからケチケチすんなよ、とシャマルは笑い飛ばした。
「調べてみないとわからんが、おまえどうやら電気に対する特異体質かもしれないな。肌と服は焦げていたんだが、驚くほど内臓へのダメージが少ないんだ。心停止したのも瞬間的に負荷が大きすぎ…」
 ランボの意識がだんだん遠くなってきた。シャマルが何を言っているのかよくわからない。リボーンが寝返りをうって、ランボの顔を蹴ってきた。その痛さは怪我の痛さと違ってなぜか心から嬉しくなった。自分が生きていたことよりも、リボーンにまた逢えたことがすごく嬉しかった。
 想像の中で、別れ際にしたようにリボーンの唇に指のキスをした。
 ――リボーン、きみにまた逢えてよかった。
 エメラルドの瞳が閉じたとき、笑顔をかたどっていたのをみて、プランツドールたちは再び、さざめくように笑った。






リボランはDVだと言われ始めました…。 /だい。






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