秋は、つとめて。



澄んだ空気は冷たさを含んでいて、少しずつ薄着の綱吉の体温を奪っていった。吐く息はいつしか白く曇っている。背中から抱かれる暖かさが気持ちいいが、そこにズレを感じる。
「やっぱり"ボス"ですね」
綱吉の気配に骸が笑う。
「わかりますか?」
綱吉は骸に抱かれながら、その向こうにクロームの柔らかさを感じた。少女はいつしか大人の女性になった。首が肩がまろみを帯びても腕や脚に匂い立つ影をみつけても凛とした少女の気配が残していた。そのクロームが骸をそして綱吉をかいなに抱いていた。母とも姉とも恋人とも違う純粋な無垢な腕。骸の翼の中で休みながら、反対に骸と骸が気を配る綱吉をも包んでいた。
「…気持ち、いいね」
作為も何もない思う気持ちだけが二人を包む。
朝日が差す少し前、夜と朝が交差するバトンを渡す瞬間の慈しみ。
ふと綱吉は心がほどけて朝の空気の中に伸びをするように感覚が広がった気がした。草木の中にも溶け込みそうだ。
「毎朝、こんなん?」
「いえ、クロームが僕のベッドにもぐりこんできた時だけですよ」
途端に綱吉は耳を染める。俗なことを、と骸はふ、と笑う。その息が真っ赤な耳に届いて、さらに震える。
「ボンゴレまで届けようとしているのは今日が初めてですねぇ」
ふたりが抱き合って寝ていることを知った綱吉は身も蓋もなく暴れ出す。
「クロームが起きちゃうでしょ」
「いや、だって、えと、え、もしかして?」
起き抜けの綱吉の爆発頭が骸の鼻先を動いて、振り返る。差し込む朝日で茶色が浮く眸に浮かぶ疑問は声に出さずとも鮮明に判る。安心させるかその逆か逡巡しながらクフフと笑う。
「きもっ。まさか、これって」
「クロームからの一方通行ですよ」
「酷い男だな!」
こちら二人の関係がクロームに逆流していたら、どんな顔をしてこれから接すればいいんだ!もうボス風吹かせられないじゃないかと赤や青で点滅する綱吉の体をぎゅっと包む。
「もうすぐクロームが起きますので行きますね」
「さっさと行け」
「朝食のときにまた」
す、と骸は消える。それでも綱吉の体には骸のクロームの暖かさが光の粒子となって残っているようだった。まるで夢の残滓のようなそれらが消えるまで綱吉はそこに佇んで朝日を浴びた。徐々に温度が上がり、視界がくっきりと陰影を持ち出して、一日が始まる。






むくつなってより、むくどくつな?
そしてふと気付きました。ここんとこのむくつな三本に共通するのは、むっくがツナと逢う時、もしくはツナをぎゅーってする時は全部朝日が出る出ないの頃でした。理由は謎。
2008/10/06 だい。






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