それでも世界は美しい。 ドォン!!ドォン!! 次々と爆発が起こった。辺りは爆発の土煙で視界が一気に悪くなる。 「ご無事ですか!10代目!!」 土埃の向こうから声が聞こえるまでもなく、獄寺のボムだと二人は悟った。 「助っ人とーじょー。なんてなー」 山からの風で視界がクリアになると、抜いた時雨金時を肩に担いだ山本と、両手の指にボムを挟む獄寺の姿が現れた。 「なんで!?」 「命令違反をしてすみません!でも、無理でした!!」 「オレは獄寺に拉致られたクチ」 一人は謝りながら、一人は笑いながら次々と敵を倒していった。 「ふざけんな、山本!!果てろ!!」 悪態をつきながら、獄寺は両手を左右に勢いよく払った。その先から放たれた数十本のボムが無数の角度に折れて、一人一人の傭兵達に当たり、爆発した。倒れる二人の前で山本が刀を構える。 「雲雀、生きてるか?」 「噛み殺すよ」 「あはははは。元気そうだな」 話しながらも、山本は右に左に切り結び、血煙を上げていた。迷いのない太刀捌きに雲雀の目が細くしなった。 爆発音と漸激の音が消えた頃、立っているのは獄寺と山本だけだった。 綱吉が草壁に発信機を渡した時、獄寺は仕事中にも拘らず、全てを放り投げて山本を連れてボンゴレを出立した。山本の携帯をチェックして、コロネロに連絡を取り、ティルトローターを敷地内に着地させた。山本が止めるわけもなく、むしろ唖然とするファミリーに「行ってきまーす」と手を振り、痺れを切らした獄寺に襟首を捕まれてドアの向こうに消えた。 綱吉はボンゴレ本部に戻る前に、現在の右腕たる秘書室室長に、現状報告の電話連絡をしたときにそう聞いた。 『ボス、そんなに私達は、頼りないですか?』 綱吉は言葉が詰まる。少しは考えたものの、ほぼ衝動的に出奔した為に周りのことは何も考えていなかった。 「ごめん…なさい」 『無事ならいいんですよ。早くお帰りください。雲の守護者と彼の部下の部屋も用意できております』 「ありがとう」 獄寺に支えられながらティルトローターの席に着いた。シートベルトの上から毛布でくるまれる。全身傷だらけだ。一番重症なのは雲雀から受けた傷だったけれど。 綱吉の後ろでは雲雀がおとなしく寝ていた。いつの間に現れたのか、黄色い小鳥が雲雀の肩口にちょこんと佇んでいた。ボンゴレに行くの行かないのと一悶着あったが、「眠い」と眠気に襲われた雲雀をこれ幸いと山本がシートにくくりつけた。獄寺に運ばれる綱吉に草壁達は深く頭を下げた。綱吉の奇襲に遅れて草壁達も現地に到着し、通信機と獄寺の携帯を使い正確な場所をリードしていた。 機体は緩やかに上昇した。綱吉は自分の手を握りしめて離さない獄寺の温かさにそこはかとなく安心する。移動し始めた機体の振動すら心配する獄寺に『だいじょうぶだよ』、口だけ動かして伝える。そこが綱吉の限界だった。 黒幕が誰だったのかなんてボンゴレに帰ってから考えればいい。 綱吉は重い眸をゆっくりと閉じた。 久しぶりに、空を見た。 乾いた空気も風の匂いもなにもかも違うけれど、あの子がいた。 ――絶対あなたの世界に連れて帰るから―― 抱きしめる声は濡れていたから情けないと返した。 きみは大空だろう?血の雨が降ろうと全てをその腕に包み込んでしまうマフィアのボス。平穏でも安寧でもない黒い世界。きみがそこに立つのなら立てばいい。あいにく僕の世界はきみが帰る場所だから、君とは繰り返し出会うのだろう。 僕は、僕の世界は拒みはしない。たとえその手が血でまみれていても。きみの世界がどれだけ汚れていても。 ――それでも世界は、美しい。 雲雀を助ける為に超モードになった綱吉が飛ぶところ」が書きたかったのでした。 ツナもヒバリも戦っている時が一番萌えます! だい。 2007/12/26 |