――夢を見た。

 昔懐かしい街並み、ごちゃごちゃしたかなり込み入った路地の中をたゆたっていた。普通の道の筈が運河のようにたっぷりとした水で満たされゆっくりと流れている。水面も汚れた家並みも昼下がりの金色の光の中きらめいていた。オレはどこかエキゾチックな雰囲気の中、同じような感じの船に乗り大切な人を抱きしめながら旅をしているようだった。腕の中の獄寺は出逢った頃の姿でおとなしく寝ていた。すべすべした肌が心地よくてそれを味わうように肌を寄せる。全てが金色に染まる中、獄寺だけが銀色に輝いていた。暖かい体を抱き直してその傾く頭によりかかって流れる街並みを眺めていく。忘れていた出来事が次々と蘇っていく。いつも隣には獄寺とツナがいた。思い出はすべて今みたいに金色に穏やかに輝いていて優しかった。

 ――おまえの望みはなんなんだよ?

 獄寺の声がした。腕の中で獄寺はすやすやと寝ているのに。獄寺の髪の毛にキスをしながら心で応える。
 オレの望みは、なんて。
 聞いてくれるだけで心が幸せに満ち溢れる。その言葉だけで満たされる。オレの望みはおまえが傍にいてくれること。幸せでいてくれること。ただそれだけ。だからその言葉だけでいいんだよ、獄寺。ずっと二人でいた。今も、そしてこの先も。オレの中におまえがいる。それがオレの望み。

 あぁもしかしたらこれはオレの夢じゃなくて獄寺の夢なのかもしれない。オレの夢はこんなに優しくはない。そうなると、このオレが考えていることは獄寺が感じていることなのかな。だったら、そうだよ獄寺。おまえは間違っていないよ。オレはおまえがいてくれるだけでいい。このぬくもりが消えるその時まで。だから――。

 まるで夢のような美しく穏やかな気持ちそのままで獄寺を包むように抱きしめた。






これは本気で見た夢をアレンジしました。場所はサンワチョウでした。とかくこの頃は、フルカラードルビー再生の夢をたくさん見ていました。キレイだったなー。
だい。/20080927






MENU