校庭の鉄棒 鉄棒に膝をかけてぐるんとぶら下がると世の中が全て上下になった。 ヤマモトが部活を終わるまで待ってろって言うから暇つぶしに校庭の端っこにある鉄棒で遊んだ。イーピンはキョーコやハル達と買い物に行っちゃったから遊んでくれないし。鏡に写る景色も面白いけど、逆さまになるのもおもしろい。空はずっと上にあるものなのに、今は地面がすぐそこにあって、空はずっと下にあって、校舎もみんな頭から生えているし、そうだ、今度イーピンに教えてあげよう、とぶらんぶらんとぶら下がっていたら、「ちびすけ、何をしているのだ」とリョーヘイの声がした。一度鉄棒を掴んで、足を抜いて地面に下りる。 「ちびすけ、久しぶりだな!」 「リョーヘイ暑苦しい、あっち行って」 太陽の塊みたいに暑苦しいリョーヘイはパーカーを頭まで被って汗びっしょりだった。 「トレーニングの一環だ!ちびすけもやらんか!?」 「やだよ」 「部外者は立ち入り禁止だよ」 リョーヘイの後ろからヒバリが来た。こっちは全然汗をかいていない。 「ヤマモトがここで待ってろって言ったんだもん」 「キミ一人?」 「そうだよ」 「今日はこれから暑くなると言っていたぞ、おまえのとこで引き取ってやれ」 「なんで僕が。責任はヤマモトだろ?」 「なんでおまえはそう冷たいのだ。知らん仲じゃないだろう!?ちびすけ、部室に来い!極限心配だぞ!」 「きみのとこの方が暑いと思うけど?」 「じゃ、おまえのとこで引き取るのか!?」 「きみはどうしたいの?」 ツナよりもずっと大きい二人を見上げていると二人が急に見てくるからびっくりした。 「ここを離れたらヤマモトが心配すると思うけど」 ヒバリは誰かに携帯をかけた。 「校内では携帯はいかんのじゃないのか!?」 「うるさいよ、ぼくはいいの。……きみんとこのがここいるんだけど引き取らないとどうなるかわかってるよね?」 「む、誰にかけたのだ?今のでは場所がわからんではないか?」 「すぐ返事が来るよ。ホラ」 すぐにヒバリの携帯が鳴った。 『てめぇ、言いたいことだけ言って切るんじゃねー!!10代目の勉強を見て差し上げているのに邪魔をするな!』 ゴクデラだ。なんか面倒くさそうなことになりそうだなぁ、帰ろうかなぁ? 「鉄棒のとこ。預かり料に沢田と手合わせさしてもらってもいいなら預かるよ」 『アホ牛!ぜってー、そこ動くなよ!!』 おれって一言も言ってないのに、なんでゴクデラはわかったのかな? 「保護者が引き取りにくるまで、きみ居てあげなよ」 「おまえはなんでいつもそう一人で話を進めるのだ!たまにはオレの話も聞かんか!」 「うるさい。きみがまともな話をできるとは思えない」 「おまえが人を理解しようとせんのがいかんのだ!拳を交えるとわかり合えるぞ!」 「きみとわかり合おうなんて思わないからいいよ」 「ランボ、待たせたな!」 振り向くとヤマモトがいつのまにかいた。おれはうるさいリョーヘイとヒバリから逃げるようにヤマモトに抱きついた。 「なんで先輩方がいるんっすか?」 しゃがんでおれをあやすヤマモトは二人に聞いた。 「何がどーなってやがるんだ!?」 そこにゴクデラも走ってきた。 「タコヘッド!」 「よー、獄寺。ツナの補習は終わったのか?」 「ちげーよ、ヒバリに呼び出されて」 「先輩」 ぜいぜい言うゴクデラはヒバリのトンファーに殴られた。 「うっせ、なんでアホ牛がここいんだよ」 飛ばされてもすぐ起き上がったゴクデラは両手にダイナマイトを持っていた。ヒバリがトンファーを振ると、後ろに避けたゴクデラの煙草の火だけが消えた。 「ん?今日はオレ午前練だったから、午後からランボと遊ぼうと約束しててさ。ここで待ち合わせしてたらヒバリと笹川兄がいてって感じ」 「今日はこれから気温がもっと上がると聞いてな!走り込みをしようとしたところ、ちびすけに会ったぞ!」 「校内で倒れられても困るからね、隼人に引き取らせるとこ」 「ヒバリ、隼人じゃなくて獄寺な。わりぃーな、獄寺。おまえに言っとけば良かったな。そんなわけで、ランボはオレが面倒見るからこの場はお開きってことで」 「今度から校内に部外者を連れ込むときは連絡しなよ」 「オッケー」 「まだ10代目の勉強が終わられないので、オレも教室戻るわ」 「後で電話するなー」 「ちびすけ!いつでもトレーニング付き合うぞ!!」 「だからやんないって!」 リョーヘイのだけに返事すると三人はばらばらに帰って行った。 「さて、邪魔者もいなくなったことだし、練習しよっか?」 ヤマモトは背伸びをして一番高い鉄棒を掴むと、ぐるんと逆上がりをした。ぐるんぐるんと回って勢いをつけて飛ぶときれいに着地した。思わず拍手をすると「10.0?」とヤマモトは笑ったから、「ジュッテン、ゼロ!」と言って、おれも笑った。 頭を撫でるヤマモトの大きな手からは、鉄棒の匂いがした。 校庭の鉄棒 from 「空を見上げる場所での10のお題」 「守護者と全員絡めよう!」でしたが、了平の拳に玉砕。うー、了平とランボもきっと話が成立しない二人だと思いました。困った時の他の守護者ということで雲雀、ごっくん、山本に登場してもらいました。ちびっこランボがみんなを呼び捨てにしていると面白いと思いました。逆上がり、山本にちゃんと教えてもらえたのかちょっと心配です。 そして、夏のボンゴレでうっかり了平とランボを書きましたが、やはり話の通じない兄弟っぽくなりました(笑) 200805 /だい。 |