LITTLE BIT SWEET as usual



結局日本に行く準備はしなかった。 朝はちょっとコーフンしちゃったけど、あのリボーンだよ。終日外出ってことは数えられないほどの愛人にお返しをしている筈で、今朝というかゆうべ来たのだって近所を通ったからレベルなんだと思う。ちょっとは世の中の仕組みがわかってきたからね、オレだって。でも、とりあえずは買い込んだカンノーリは一つだけで我慢している。これはホントにおいしいんだけど、一度食べ過ぎてウエストが大変になった時から一日一個と決めている。あれはマジビビった。小さい頃から甘いものばかり食べていたけど、アレだけは別物。紙の袋から匂いが漂ってくるからもう一回り大きい紙袋に入れて封をした。今夜、リボーンに逢ったときに旅のお供にでもって言って渡せばいいや。あぁそうだ。きっとビアンキだ。この時期日本は桜がきれいできっとそれを見せに行くのだろう。オレってすげぇ、ここまでリボーンの考えを予想できるようになったよ、と悦に入りながら、出かける為にジャケットと紙袋を持ち、部屋の電気を消したときにカーテンが動いた。
「…リボーン?」
外の灯りをバックにリボーンが窓枠に座っていた。スパイダーマンかおまえは。……想像してしまった。笑いが止まらなくてCz75の冷たい銃口が額につきつけられる頃には涙が滲むほどだった。
「ごめん、ごめん。ちょっとスパイディーなお前を想像したらおかしくなって」
「笑ったまま死ね」
「はい、お土産」
銃口の前に片手に持った袋を差し出す。ボンゴレに行く手間が省けたな。
「なんだコレは」
「日本に行くんだろ。そのお土産。誰が一緒でもこれなら大丈夫だろうって」
リボーンの表情が瞬間見えなくなった。と、思ったら床に押し倒されていた。背中とか頭とか叩き付けられたのに驚き過ぎて痛みがやってこなかった。腹を片足で踏まれる。見上げても暗くてよく表情が見えない。向けられた銃口が鈍く光って、痛むはずの背筋を冷たいものが降りた。間違いなくリボーンは殺気を持って銃を向けている。
「……オレ、何か間違えた?」
「日本に行くってどうやって導いた?」
「バレンタインの時に、日本のチョコは最高だって言ったから」
慎重に言葉選びを間違えないように考える。
「で、なんでそれが土産になんだ?」
あー!オレの大切なカンノーリが!我を忘れて転がった紙袋を拾い上げると、二重にしていたから幸い一個も溢れていなかった。
「もー。おいしいんだからさ」
「一回死んどけ」
紙袋を抱えてなんとなく正座したオレの横に穴一つ。同時に感じた衝撃波は間違いなく銃弾で。
「……うううう撃った?」
実弾なんて撃たれたのは自慢じゃないけれど人生で初めてで、完全に腰を抜かした。『死ぬ気弾撃たれるわけじゃないんだから』と言ったボンゴレの気持ちが今なら判る。これ、死んじゃうからね。本気で死ぬからね。ボンゴレは死ぬ気で復活するけど、オレは死ぬからな。そこんとこリボーンはわかってるよな。片目で伺うように見上げると銃口から硝煙が上がって消えた。
「教育を間違えた」
「は?」
「大方、お前のことだからホワイトデーでオレが愛人の間を飛び回っていて、最後に…ビアンキを日本に連れて行くから、その見送りにでも来させるつもりとか考えたんだろう」
最後は違うけどほぼその通りなのでかくかくと首を振る。喉は張り付いて声なんて出やしない。とりあえず銃をしまってくれたので、体の緊張が解ける。
「言っとくけどな。ココにはホワイトデーの習慣なんてねーからな」
「ボンゴレではお返しをたくさん貰ったよ。ボヴィーノでも」
「どっちもジャッポネーゼナイズされてんだよ」
「じゃ、なんで期待してるって」
「俺に貸しあるからな」
「ええと、よくわかんないんだけど、オレがお返しするのまではわかるんだけど、なんで日本なんだ?」
リボーンの片眉がしなる。
「ふむ。確かにな」
リボーンは腕の中の紙袋をテーブルに置き、何をするんだろうと眺めていたオレの胸元を鷲掴みにすると、ぐいっと引き上げた。う、わっ。ちょっと気道が塞がれる。
「ジャッポネーゼではバレンタインは?」
優雅に笑って何を言いだすんだ?
「愛の告白…?」
「そのお返しは?」
「了承の意味?」
リボーンはにっこりと笑って唇を押し付けてきた。って、えええ!?
「俺は愛人には優しいからな」
酸欠状態になりながらリボーンのキスを受けたままになっていると、唇を薄い舌で舐められてぞくっとした。朦朧としてきたらさっき抜けた腰が落ちて、ぐっと引き上げられるとテーブルに腰掛けさせられた。ちょっと離れる間に深く息を吸い込むと一緒にリボーンのいい匂いがして、そしてまたリボーンの気持ちのいいキスにぼんやりしてきた。
「日本の桜は見頃らしいぞ」
桜の花びらが舞う光景が浮かび上がる。10年バズーカで呼ばれすぎてどれが本当の記憶かわからないけれど、並盛でみんなで見たすばらしい光景をリボーンと見るのはすごくいい事だと思った。 今までの嫌がらせのキスと違って、顔中に触れるだけの優しいキスをしてくるのがくすぐったくって嬉しくってオレもリボーンのあちこちにキスをした。
「リボ…時間…」
そうだなって言ってもリボーンは全然キスを止めてくれなかった。だからオレもリボーンの背中に手を回してもっと深くリボーンにキスをした。






全然リトルビットじゃない甘いリボランでした。たまにはいいじゃないですか。ええ。今年に入って砂を吐くほどのリボランばかり書いていますけど(笑)
20080314 だい。






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