L'ANNO NUOVO !!



ニューイヤーといっても昨日と格別に何かが変わるわけじゃない。
それでもせっかくの夜なので、ファミリーと大騒ぎをしながらその瞬間を迎えようとしていた。パーティ好きの異名を持つボヴィーノは、その名に恥じないほどの屋敷を上げての大騒ぎだ。
「――な、んで?」
誰かが始めたカウントする声に合わせてトレス、ドスと数えていたら不意にリボーンが現れた。周りの誰も見えていないように、オレに近付くとぐいと抱き寄せられた。
ウーノ!ゼロ!という声にパパン!パパン!とクラッカーが鳴り、プロージット!!とグラスがぶつかってあちこちでシャンパンの泡が零れるのを眺めながら、リボーンの低い声が「l'annonuovo」と耳元で囁いた。その息がやけに熱くって、抱きしめる腕の力が強くって、オレは息ができなくなった。すぐそこの、子猫ちゃんのように潤むリボーンの黒目にはまぬけなオレの顔だけが映っていた。
「返事は?」
リボーンってこんなに気持ちいい声だったっけ?耳を通って頭の中をつるんと回っていく、妙にくすぐったい感じがした。そっか、オレはたぶん新年の魔法というものにかかっているんだ。
「nu,nuovo anno」
「Ti amo?」
「Ti amo…ってエエッ!?」
そうじゃなきゃ、リボーンに愛の告白なんてしない。するわけがない。
「じゃ、キスしろ」
「そこまで命令形!?」
「当たり前だ。告白してやったんだから、てめーからやるのが礼儀ってもんだろ」
「そ、そうなのかなぁ?」
納得いかないもののリボーンが言うならそうなんだろう、とリボーンに顔を近づけてふと気付いた。
「いやいやいやオレアンタのこと愛していないし」
「てめーは自分のことを知らねーだけだ」
「いやいやいや、オレのことはオレが一番知ってる」
「安心しろ。俺が間違うわけはねーぞ。てめーは格下らしく、俺様が言うとおりにすればいーんだ。ということで、キスをしろ」
どこか納得できないなぁと思いながら酔っ払っていたこともあって、リボーンのきれーな顔を挟んでみた。
「Ti amo Reborn」
そして、ちゅ、とキスをした。子供みたいな戯れのキス。なんかおかしくなってきて、おでこをつき合わせて笑ってしまった。
「Ti amo Lambo」
まるで恋人同士みたいだ。
「Ti amo Reborn」
そして、ちゅって。大騒ぎしている足元でキスを繰り返すオレ達なんて、まるで誰にも見えてやしない。
「まるで、恋人同士みたいだ」
「まるで、じゃなくてそうなんだぞ」
「なんで?」
「日本では一年の計は元旦に…」
偉そうな唇をキスで塞いだ。
「やっぱいい。難しいことは今日ぐらい聞きたくない」
陽気な曲が奏でられ、足を踏み鳴らして踊り出す。クラッカーの紙テープやシャンパンの黄金の光や手拍子の中、オレ達は床に腰を下ろして、互いの足を伸ばして向き合った。リボーンのスーツもオレのシャツもワインやシャンパンでびしょびしょだ。
「男前が台無しだ」
「――責任でも取るか?」
「やれやれ。アンタを引き受けられるヤツなんて、ボンゴレ以外いやしないよ」
リボーンに抱き寄せられた。シャンパンの甘い匂いが立ち上る。シャツガベタベタして気持ち悪いのに、リボーンの体温が伝わってきて、その肩に頭を傾けた。
「…リボーン」
「どんな魔法をかけたんだ。なんか心臓が止まらないぞ」
「酒の呑みすぎだろ?」
「今、それを言う!?」
身を離してリボーンの顔を覗き込むと、思った通りの人をくったよーな笑顔。

「ほんっとにアンタはやさしくないね」
「おめーにやさしくなったら世も末だ」
「アンタにやさしくされると裏を考えるよ」

そう言い合って、オレはもう一度リボーンにキスをした。これ以上自分の心臓の音ばかり聞きたくない。
ああ早く、新年の魔法よ消えてくれ!

そうじゃないとホントのことになっちまう!






ただのらぶらぶでもいいじゃん!4週間過ぎてても、さ。
だい。2008/1/28






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