愛かもしれない 引き上げられるようにランボの意識が戻った。ベッドに寝かされていて、横でリボーンが本を読んでいた。 「この仕事続けるか?それとも辞めるか?」 「…続けるよ。自分より彼女を殺しちゃったんだから」 「おまえも自分を殺してるぞ。今朝までのお前だったら、鬱陶しく泣いていただろう」 親殺しの代償はヒットマンのライセンス。ヘタな映画にもなりゃしない。ランボは両手で顔を隠して苦しげに笑った。 「ようこそ、後戻りできない世界へ(ウェルカム・トゥ・ザ・ヒットマン・ライフ)。ランボ」 ランボは初めてリボーンに名前を呼ばれたことに気付いた。リボーンはいつもの見下した笑いではなく、ツナたちに向けるような笑いをランボに向けた。一瞬、呆けて抱きつく。いつもなら払いのけられるはずだけど、今回は大丈夫だと確信して首に両腕を回す。リボーンも軽くランボの背中に両腕を回した。 今なら、今なら、殺されてもいいと思った。手にかけた母の気持ちがやっと理解できた。寝つけない夜、シエナのパリオがどれだけ大規模で、どれだけ楽しいか、どれだけ人の心が一つになることがすばらしいかを繰り返し聞かされた。シエナ出身の彼女にとって、その祭りの最高潮のところで人生をまっとうするのは悪いことではなかったのだろう。隣には彼女の旦那もいた。彼の腕の中で最期を迎えられたことだろう。 ―あぁそれに、今日は今年2回目のパリオ。聖母被昇天祭だ。 マリアが神の母としての栄誉を与えられ、天国に迎え被(ら)れた日。なんて彼女に似合う日。ランボは純粋に彼女が天国に迎えられるように祈った。 この黒い天使に身を預けることを選択した自分が天国には行くことはない。だからこそ、自分の分まで彼女が天国に迎えられたらいいと、心から思った。 リボーンの決め台詞が降りてきた時に、リボーンに惚れたバカがここにいます。/だい。 |