red hot strawberry



買い物帰りに銃をつきつけられて拉致られたのはビーチだった。
そりゃね、銃は本物だと思ったのはヒットマン失格だと思ったけどね。
だって、しょうがないじゃん。
リボーンが銃を持ってたら、プラスティックの水鉄砲だって本物に見えるって。
「買い物帰りなんだけど」
「見りゃわかる。付き合え」
「冷凍物とかあるんだけど」
「どーせアイスだろ。車ん中で食え」
「アンタ、どんだけ千里眼」
助手席に回って買い物袋を抱えたまま乗り込む。
「今日はたまたまいないけど、子猫ちゃんが待ってたらどーすんのさ」
「いんのか?」
ギュイン!と車は発進して、オレは無様にシートに頭をぶつけた。
「舌咬んだらどーすんのさ」
「知らねーな」
リボーンは実に楽しそうにドライブをする。何を言っても無駄だ。
「ナイフ持ってんだろ、貸せよ」
こいつの得物はCz75だけど、きっと持ってんだろ。映画のヒットマンはそういうもんだ。
だけど半信半疑って言葉があるように、半分は冗談だったんだ。なのに、コイツ、剥き身でナイフ渡しやがったよ!それもちゃんと自分がハンドル部分で、オレの掌に刃の部分。
「おかしくない?」
「欲しいつったのはお前だぞ」
「常識ってもんがあるだろ、常識ってもんが」
嫌味なくらいに光ったナイフをリボーン側から受け取り、苺のヘタを取り始めた。オレの指が飛んだら、リボーンに責任とってもらおう。きっと鼻で笑われるだけだろうけど。
「リ、リボーン、安全運転でね!」
容易くその絵が浮かんで、ちょっと慌てて注意する。
「てめーが、気をつけろ」
うわぁぁん。せっかく苺が旬だったから、アイスに混ぜて食べようと思っただけなのに。それでも、なんとか車が停まるまでオレの指はついていたし、ヘタを取り除いた苺もパウントの中に散らばらせた。
「降りろ」
エトナ山の見える岬の端で、ちょうど夕陽が沈むところだった。ボンネットによりかかってリボーンは黙ってそれを見ている。オレといえば、アイスをどうやって食べようか思案していた。流石にリボーンでもスプーンは出してくれないだろうし。
「アホ牛」
そんなことを考えていたら急にリボーンが振り返った。真っ赤な夕陽を背にすると、その小さな体は夕陽に溶けそうで、思わず目を閉じた。
「溶ける前に食わせろ」
「え?」
溶けちゃうの?
「それだ」
夕陽の中から黒い細い腕が出てきて、アイスを持つ腕を引く。あぁ。
「スプーン、持ってないよね」
「食わせろ」
オレに向かってあーん、と口を開ける。だから、スプーンは持ってないし。
「アホ、牛」
わざわざ区切って、リボーンは白い細いその指で苺をつまみアイスをすくってオレの口に放りこんだ。
冷たくて、甘い!冷たさに目を閉じると、あかく染まったリボーンがオレを見上げてくすくす笑ってた。
お返し、とばかりに同じようにリボーンの口に苺とアイスを落とす。噛んで、のみこんで、あーん。
リボーンはホントにおいしそうに食べていく。タイミングが悪くて、リボーンに指を舐められる。
うわ、なんか背徳的な感じ。気付かれないように、あわてて次の苺を自分の口に運ぶ。ちょうどいい感じで両方食べ終わった。指についたアイスを舐めていると、リボーンにその指をとられ舐められた。
ええ!?
驚いたオレを見上げてリボーンはニヤリと笑った。
「うまかったぞ、アホ牛」
「なんて偉そう!」
口にすると、リボーンはアハハと大声で笑い始めた。すっかり夕陽は落ちて、リボーンも辺りも夕暮れに染まった。
けれど、きっとオレの顔はまだ夕陽の色をしているような気がする。






リボラン拍手 3 20070626
まだまだ恋には落ちないなぁ。/だい。






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