ある日のリボーンと山本の会話。


「物事には目的がいるぞ」
「何の話?」
「獄寺だ」
山本は口をつぐむ。
「隠し事ができねーツラしててだんまりこくな」
「そんなに顔に出てる?」
「あいつに関してはな」
街灯もあまり届かない路地は薄暗く、向こうの人数もよくわからない。ちょっとボンゴレの息のかからない街に行くとすぐこれだ。油断も隙もあったものじゃない。
「で、目的って?」
「お前は獄寺をどういう風にしたいかどうかだ。隷属か興味かただの開発か、な」
リボーンは腕をまっすぐに伸ばし、サイレンサーをつけた銃で発砲を続ける。
壁際に背中を預けて山本は耳を澄ます。ひとしきり銃弾戦が終わると、向こうも気配を断ちこちらの出方を待っている。
「そんなんじゃねぇよ」
リボーンは銃の残弾を確認してカートリッジの確認をする。
「信頼関係が崩れることの怖さは無いのか?」
「無いね、獄寺は獄寺だし、あいつが嫌がることはしたくない」
「お前がそれを見誤るという可能性もある」
再び山本は口を閉ざした。
まだ実行には何一つ移していない。
体を重ねるようになってから、普通のセックスしかしてこなかった。けれど、違う世界を覗いた山本は獄寺をあの世界に連れていきたいと思った。何よりも自分がそうしたいと強く思った。しかし今、問いただされるまで、獄寺がそれを望まない事を全く考えていなかったことに気付いた。
リボーンの視線が行け、と言う。
刀を構え直すと鍔が鳴った。
「tre, due, uno, zero」
リボーンのカウントで土を蹴る。銃弾の雨に我が身をさらす恐怖は無い。何故ならリボーンが完璧に援護するから、そして、自分が撃たれることが考えられないから。
でも、でも獄寺が山本の望みを断ったことを考えると恐怖が沸き上がる。
これまで以上に丁寧に、仔細に獄寺を見ていかなければ始められない、と思い、またリボーンが示唆した「目的」も考えなければならない。
これまでも目隠しや手を縛ってや車でのセックスはやってきた。そんなプレイで終わるのか、それとも、獄寺を「変えて」いくのか。答えは後者とすぐに出ているが、果たしてそれは「正しい」ことなのか。自分にその資質があるのか。
戦うことに迷いのない山本の時雨金時が血の雨を作り、その中を駆け抜けていく。リボーンの銃弾が一人、また一人と血の海を作っていく。
息を乱すことなく、全員を片付けた山本は不安で満たされていた。
「俺がどう見ているか話そうか?」
山本の肩に寄りかかりリボーンは人好きのする笑顔をつくる。胡散臭ぇと山本は鼻で笑った。
「おまえの」
今まで銃を握っていた指先が山本の頭をつつく。
「考えなんて獄寺にも伝わっているだろ?ま、やってみて駄目だったらそれから考えればいいじゃねぇか」
「間違っていたらそこでアウトなのな」
「それでもまだワンアウトだろ?」
ふと、出逢った頃のリボーンを思い出した。寄りかかられているこの肩にちょこんと座っていた事を。その頃の自分は野球に関しては無敵だった。
「小僧って優しいのな」
リボーンは身を離してホテルへと歩き出した。
「ホテルに着いたら呑み直すか?」
刀をかつぎ、のほほんと山本は提案した。いいアイデアだ、とリボーンが返す。その胸の中で囁いた。

――おまえがこっち側の人間だからだよ。山本。


続く。






リボーンは山本に親切だけど、私は拍手をくださる方に親切じゃなくてすみません。
リアマフィの原稿が終わったら、終わったらーーーーっ!!
20080911 だい






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