貴方、いい人で終わるタイプでしょ



不思議と傷のない顔を両手で挟んでディープキス。柔らかい唇と熱い舌が絡まりすぐに呼吸が熱を持つ。唇を合わせながら汚れたシャツをはだけさせ、汗の匂いのする首筋に歯をたててきつく吸う。
あぁと声を上げる雲雀に背を押され、まだ血が流れ続ける肩の傷跡を舐めると、鋭い痛みと柔らかい感触に雲雀は体を震わせて1オクターブ高い声でディーノと、呼んだ。ディーノは雲雀に指をしゃぶらせて、雲雀の後ろにゆっくりと指を離す。その指を止めて雲雀が体を起こす。ディーノが声を出す前に雲雀は緩んでいたネクタイをシュッとほどいて投げ捨て、シャツを、スラックスを下着ごともどかしげに次々と脱いで、全裸になった。返り血を浴びるだけだった雲雀が、自分の血で赤く染まっているというのに、まるで無頓着だ。
「…恭弥。おまえキレイだな」
「バカなこと言ってないで」
いつになく積極的な雲雀をディーノは目を細めて視姦するようにねっとりと眺める。雲雀はディーノの足の間に膝をつき、ベルトを緩める。はしたなく舌なめずりをして、みせつけるようにディーノのペニスを口に含んだ。
「はっっ!」
舌を絡めて下から舐めあげられてディーノは体を跳ねさせた。敏感な先端を這うように嘗められ、片手で双球を転がされる。卑猥な音をたてて啜られて腰がピクピクと痙攣するのを止められない。
「キョウ…ヤッ、すっげぇっ」
一気に熱を上げられ霞む視界の中に、縦横無尽な赤い線が目に入る。俯いて上下に動く雲雀の背中の擦過傷だ。生半可な相手じゃ雲雀がここまで傷つくことがないのはディーノ自身がよく知っている。一体何人を相手にしたんだ?とディーノは思いながら傷のひとつに手を伸ばす。生暖かいぬるっとした感触にゾクっとして雲雀の頭が動く。雲雀の強く逸らすことのない瞳が上目遣いでディーノを見据えるから、煽られて余計に大きくなってしまう。荒くなる息を抑えきれずに雲雀の形のいい頭を片手で抑える。
「ダメだっ出ちまうっ」
「ダメ」
雲雀の制止に自分が犯されているような気分になって、ディーノ無情にもディーノから口を離し、自分の血で染まった手のひらでディーノの先端を包んでなでまわすと、ディーノは目を見開いて息を止める。剥き出しの神経の先をヌルヌルと扱かれて体中が震える。
「あぁっ…いいっっ!!」
雲雀は血まみれのそれを自分で後孔にあててゆっくりと身を沈め始めたが、馴らさずに入れるのに躊躇したディーノは雲雀の腰を掴んで止めた。深く息を吐きながらそろそろと入れていたところで、急に止められて呼吸を止める雲雀の体はディーノをしめつけてしまう。
「んんっ!…あ、やっ!!…ああああっっ」
とっくに限界を超えていたディーノはそこで雲雀の中に放った。雲雀は快感に震えるディーノに構わず、勢いでぺたん、と腰を落とした。射精中に擦られてディーノは女みたいな嬌声をあげて雲雀の奥に残りを搾り出した。
「…キョウヤ、ごめん!」
雲雀は闘いの最中に見せる挑むような笑みを口にのせて、ディーノを入れたまま屈むと、すれ違いさまに見る強い眸に背筋を冷たく撫でられた気がした。ディーノの耳を甘く噛んだ。
「早く貴方をちょうだい?」
やられっぱなしのディーノはその頭を片手で抱いて、雲雀の傷だらけの背中に手を回した。うっすらと流れる血は浮き上がる背骨の両側を沿って、ディーノが入るそこに流れていた。そのままディーノの指が血を塗りこめるように優しく孔の周りを撫でると雲雀がかわいく声をこぼして体を震わせる。一つになっているこの瞬間以外に聞くことのない甘い声がディーノを優しいだけの男に変える。
「痛くない?」
「早く動いて」
「優しくできないよ?」
「…んっ、いいっからっ。早くっ」
唇を合わすと貪るように口付けを交わす。舌同士がこすれて鉄の味が混じるキスに、頭の芯がぼおっとしてくる。まるで麻薬のような味。雲雀の腰を掴んで下から突き上げるとディーノの腹に両手をついて体を起こして雲雀があられもなく胸をそらして喘ぐ。
「いいっ、いいっ。もっと、もっ…とっ。ひやっ、ああんっっ」
腰を押さえつけたまま片手を雲雀の仰け反る胸の片方の突起を摘み上げるときゅっとディーノをしめつける。何度も血をすくって塗りつけるように指先で揉むと硬さが増してくるからディーノはそのまま赤い跡をつけて雲雀自身に初めて触れた。既に熱く反り返っていて濡れている。
「いやらしいなぁ。腰が前後に動いているぜ」
「はっ、いいっ、ああっ……いっ」
「まだダメ」
さっきのお返しとばかりにはぜる直前の雲雀から手を離す。
「もっと声を聞かせて?」
声は優しいのに体は凶暴だ。雲雀が揺らす動きに合わせて突き上げては落としていくのを繰り返していくと限界が近づいてきたので、もう一度雲雀に触れた。
「ああっ、い、いくっ。ディー!!」
片手で前後に扱くと前と後ろを同時に刺激を受けた雲雀はベッドで呼ぶ名前を叫んでディーノをしめつけてあっけなく放った。
「…キョウヤ!!」
口をかみしめて雲雀を押し上げていたディーノは再度雲雀の中に放出した。血に混じった汗が媒体になって濡れる二人の体がぴったりとくっつく。はぁはぁと自分の上で喘ぎながら最後まで出し切った雲雀の体を受け止める。脊髄反射でしめつけられてディーノはまた反応し始める自分に苦笑しながら抜く。血を含む体液で汚れるソファに雲雀を横たわらせ、バスの準備をするためにバスルームに向かった。先にシャワーを浴びて血と汗を流し、改めて雲雀を迎えにいく。落ち着いた呼吸で両手で顔を隠す雲雀を抱き上げる。
「歩ける」
すっかり常に戻った雲雀に構わずバスルームに運びバスタブに沈めた。透明なお湯に赤い血が混じるが痛む様子も見せずに雲雀は気持ちよさそうに四肢を伸ばした。ディーノはその雲雀を抱くように入る。楽しみを邪魔された雲雀が横目で睨むも「まだ足りないだろう?」と揶揄するように耳元で囁かれて、口の端を上げて、答え代わりにディーノにくちづけた。これぐらいじゃ雲雀のこころはまだおちつかないらしい。

「ツナ、今度こんな面白いことをやるときは声をかけてくれよ」
バスローブ姿で寝転ぶ雲雀に腕枕をしながら、ディーノは綱吉に作戦成功の祝いの電話を入れた。
『いえいえ、そうはないですよ。ところで雲雀さんそちらに来ています?姿が見えないんです』
「おぅ。今夜はこっちに泊まらせるよ」
『よろしくお願いします。じゃ、おやすみなさい』
同じ言葉を返して電話を切る。雲雀がここにいると言った後の小さなため息をディーノは聞き漏らさなかった。諦めのため息じゃなくて安心したため息。リリースを読んで、雲雀が嬉々としてかなりの数を片付けている姿が目に浮かぶ。今は寝息をたてる雲雀の黒髪にキスを送った。綱吉がどう思っているのかわからないが、自分だってこの関係をどう捉えていいのか迷っている。少なくとも、頼られている間は相手をするのは悪くないだろう。とりとめのない雲雀はまさに雲。風の吹くままこれからも生きていくことだろう。だから風がこちらに吹いたときに精一杯できることをしてあげたい、ディーノはそう結論づけて部屋の電気を消した。

作戦の成功に沸くボンゴレとは対照的に、キャッバローネ邸はとても静かな夜だった。ボンゴレの作戦の中で間違いなく中枢を担った若きじゃじゃ馬を抱いて、ディーノは闇の中でその静かな寝息を聞いていた。
目が冴えて眠気が訪れない。けれど、自分が誰かの役に立つことができたということでこころは満たされて、いた。例え、利用されていたとしても、雲雀なら仕方ないなぁと思いながら。






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