aqua-vitae (命の水) それからコロネロとリボーンと同じ部屋で生活をするようになった。 二人は赤ん坊のくせにまるで大人のような会話をしてよく喧嘩をしていた。二人ともここにいるのは本意ではないようだった。そして二人には友達のようなペットがいた。リボーンにはカメレオンのレオン、コロネロには鷹のファルコ。 次第に二人と自分は同じ種類だけど何かが違うことを感じとっていた。しかし、それを口に出す余裕はなかった。 「オラ、走れ!」 目下コロネロと体力づくりの真っ最中だった。太陽の光に目がくらむラル・ミルチはサングラスを兼用したスコープをつけてコロネロの後を追いかけていた。どれだけ息が上がってもコロネロは手を緩めなかった。野原を走り砂浜を山の中を走りぬける。 「飲め」 二人の上空をファルコが飛んでいた。彼にくくりつけていた水筒をラル・ミルチに渡す。 「すまん」 草原に大の字に寝転がりながらそれを受け取り小さい口でんくんくと飲む。 「着々と体力ついてきてんじゃねーか、偉いぞコラ」 ラル・ミルチは飲み終わった水筒をファルコに投げると、旋回していたファルコは飛びながら要領よく首にかけた。 「そろそろ火器の訓練でも始めるか。どんな武器がいいか?」 「それがいい」 コロネロの背中にある対戦車用のライフルを指す。 「やっぱ、だよな。俺のはデカすぎるから小さいやつから訓練するぜコラ」 おう、とラル・ミルチは立ち上がって服の砂埃を払った。 「とりあえず腹減ったから帰ろうぜ。お前は走って帰れ」 コロネロはファルコに捕まって上空に小さくなった。ラル・ミルチはパチン、と片方の手に拳を撃ちつけて気合を入れるとコロネロの飛んだ方向へ転がるように走り出した。 「で、どーすんだ?家光」 「どうしようかねぇ。壊すのは簡単だけど、俺たちってバレたらかなりヤバいわけよ」 「ちっ。アイツもついでに後始末しろってことだよなコラ」 夕食後、ラル・ミルチは家光の膝の上でまどろみながら聞くとはなしに3人の話を聞いていた。3人とは言わずとしれた家光、コロネロ、リボーンだ。ラル・ミルチが気付いてからずっとこの家にいた。周囲に人の気配はなく、どこかの山の一角のようだった。家光はふらっと消えては現れる。時々黒スーツの男や女が現れてはどこかへ帰っていくが、彼等とラル・ミルチが話すことはなかった。 ラル・ミルチの毎日は朝食・特訓・昼食・特訓・おやつ・特訓・お昼寝・特訓・夕食・就寝の繰り返しでそこまで気を配る余裕はなかった。夕食後はベッドに潜り込むのが常だが、家光がいるときは彼が好んで抱きたがるので、こうやってあぐらをかいた家光の膝の上でうとうとしている。 「俺もおまえらも身内には手がバレてるからな」 あまりいい話ではないようだ。ラル・ミルチの髪を撫でる手がふと止まった。 「だな」 「後少しで仕上がるぜ、コラ」 「大丈夫か?」 「俺様を誰だと思ってやがる」 「コイツは信用できねーが、弟子は信用できるぜ」 「んだとコラ勝負すっか?」 ゴチンゴチンと何かがぶつかる音がする。薄目を開けるとコロネロとリボーンが頭突きを繰り返していた。 「聞いてたか?ラル・ミルチ」 家光が両手で頭突きを繰り返すふたりの襟首を掴み上げて左右に離しながら、話しかけた。 「聞いてたが、理解していない。説明してくれ」 ラル・ミルチは起き上がって家光に向かい合った。 「お前が生まれたとこをな、徹底的に破壊して欲しいんだ」 「オレにできるのか?」 小さい足を伸ばしてリボーンと蹴り合いを続けるコロネロに聞く。 「できるぜ!後一週間すればな。明日から特訓のレベルを上げるから覚悟していろコラ!」 「わかった」 家光が「じゃ、頼むな」と言って大きい拳をラル・ミルチに掲げた。それに小さな小さな拳をコツンとぶつけて契約が成立した。 |