タイム・トラベラー 知り合いに逢わないように−まぁ、判るとは思わないけれど−、いつもの道を避けて隼人の自宅に向かった。先に10年前のここの世界に来ているはずだ。 むき身の刀をジャケットで包み、平時だったら涙が出るほど懐かしい道を辿る。 果たして、獄寺の家の窓が開いていた。 「――隼人」 耳のいいアイツなら聞こえるだろう。反応がなければ、足元の小石でも投げればいい。窓に反射する太陽の光に目を細めてみているとカーテンが動いた。 「俺だ。入れてくれ」 窓が全開にされ、久しぶりに見る隼人が窓枠に手をつけて目を見開いている。 「…てめーも来たのかよ」 くいっと顎で上がるように指示されて、マンションの入り口に足を向けた。 |