タイム・トラベラー



 飛ばされた後、5分で入れ替わらないと判った時点で入江の捜索を中断して預金を下ろして、まずここの状況を確認したらしい。昨日、獄寺が調べた時点では自分とツナしか入れ替わっていなかったらしい。
「……10代目に逢ったか?」
 くわえタバコの隼人から万札を数枚もらう。中学ん時から給料を貰ってたこいつの口座には結構な金額があったらしい。
「あぁ、おまえとラル・ミルチをアジトに案内した」
「謝る機会ができたと安心した自分に嫌気がした」
「……おまえに殴られた。そのことで」
「悪かったな…」
 隼人は俺の親父のことを口に出そうか逡巡していたから話題を変えた。
「とりあえず、あっちのことよりこっちのことを考えよう」
「入江はまだみつからない」
「ここいらの学校を張るしかねーかな?あ…俺が飛ばされたときにイーピン達も一緒にいたんだ」
「達って?」
「ツナとおまえと一緒に笹川達を迎えに行ったところで、先に迎えに行っていたイーピンとランボに出会ったんだ。ブラックスペルと交戦中に飛ばされた」
「な!!そんなとこで」
「大丈夫だ、ツナにはおまえがついているし、ボンゴレリングもあるし、匣も置いてきた」
 胸元を掴み上げる隼人をなだめる。目の前にして、改めて10年前と比べてしまう。変わっていないつもりだったのに、眼差しの鋭さも冷たさを感じさせる頬も全然違う。激昂して赤みを増した目元を指でなぞり頭を胸に押し付ける。
「俺達が揃ったんだ。できねーことはねーよ」
 一日早く一人で飛ばされて不安だったろう。大きく呼吸する肩をなだめるように撫でる。
「とりあえず俺達を飛ばしたやつがわかったらフクロだな」
「はっ、フクロじゃ足りねー。ハンゴロシにしてやる」
 くっと笑う気配。顎をすくいあげてキス。額をつけてお互いの瞳を覗き込む。迷いも脅えもない。いつもの隼人だ。
「じゃ、行こうぜ」
 隼人はニヤリと片頬をあげて唇を重ねて、立ち上がった。
「どっかのタイミングで家に置いてる時雨金時取ってきてーな」
「学校の前に寄ろう」
 落ち着いて見回すと、見慣れた隼人の部屋に違和感があった。
「背が伸びてんだよ」
 表情を読んで隼人が笑うからつられて俺も頬が緩んだ。






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