合わせ鏡



『夜中の12時ぴったりに合わせ鏡をすると将来の恋人が見える』
 女の子たちがかしましく話していた内容は簡潔にいうと、どうやらそういうことらしかった。とりたてて聞き耳を立てていたつもりはないのだが、山本も獄寺もいない昼休みは綱吉にとって非常に珍しいものだったので、なんだか新鮮な気持ちで周りを眺めていたら耳に入ってきたのだ。
『夜中の合わせ鏡で出てくるのって、悪魔じゃなかったかな』
 内心首をひねったが、女の子たちの会話に突っ込みを入れるほど怖いもの知らずではなかったので口には出さず男どもの領域でおとなしくしているうちに獄寺が戻ってきたりしてそんな話があったことも忘れてしまっていたけれど。
『怖い話って なんでか夜ひとりになってから思い出すんだよなあ』
 いや 将来の恋人がみえるってのは怖い話じゃないし、と夜中の洗面台の前でセルフ突っ込みを入れては見たもののやっぱり悪魔が出てくるとか将来がみえるってのはちょっと怖い話かもなと思ってしまうとなんとなく怖い気になってくる。
 まあ 合わせ鏡なんてやろうと思わなきゃできないもんだしね、と自分の顔を横目で見ながら電気を消して部屋へ戻る。いや戻ろうとした、のだが。怖いと思いながら見たせいで 鏡に自分ではない影が映ったと認識してしまったのがいけなかったのか。それともやはり夜中の鏡にはなにか力があるのか。
「鏡、合わせてないんですけど・・・」
 艶やかに微笑む悪魔が鏡の中にたたずんでいた。
「夜中に鏡で六道骸を見るなんて、ものすごく怖いって」
 リボーンと行動するようになってから、不思議なことに対して免疫ができたのか 明らかに異常な現象にもつい付き合ってしまう。 鏡の中の骸が何か口を動かしたが 声は聞こえなかった。 思わず鏡に耳を近づけようとして そういう問題じゃないよな、と苦笑する。
「俺は霊感とか無いんだからさ、こういうことされても正直どうしていいかわかんないよ・・・」
 こちらの言うことは分かるのか 綱吉の言葉に反応したように笑みを深くした骸にどうしてか触れたくなって思わず手を伸ばす。同じように骸も手を差し伸べてきて、お互いの手が触れる、そう思ったとたんに。 かちり、と音がたって指は冷たい感触にはじかれ 鏡の中には綱吉自身の姿が映されるばかり。
「・・・もう、ほんとにお前が何がしたいか全然わかんないよ・・・。」
 話がしたかったな、と思ってしまったのはきっと自分の甘さだとはおもうのだが。
「ああもう、今日は悪い夢見そうだよ・・・」
 寝床にもぐりこんでからあの男ならいつか夢の中にも出てくるかもと考えて、少し楽しみになってしまったのはいったいなぜなのか。 考えるとさらに怖いことになりそうで 大急ぎで首を振っていやなことは寝て忘れる!と自分に宣言して目を閉じる。
 いつか本当に逢えたら 文句を言ってやろうと思いながら。






ほんとはユビキリで、ツナと骸さんを水の中で逢わせるはずだったんですが
かすりもしなかったので、今度は会わせようと思ったのですが。
まだニアミスでした。/主任

主任からのいただきもの。「合わせ鏡、その後」と合わせてお楽しみ下さい! 20080102






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