愛とは、同じ明日が来るのか不安になることである。 「うっそ!!まじで!?」 ランボの大声に、周りのプランツ・ドール達がピタ、とさざめきを止めた。慌てて「ごめんねー」とにこやかにランボは謝って、Dr.シャマルに向かい合った。シャマルは迷惑そうな表情を崩さずに、あごひげを指先で弄りながら 「ホントだって」 と面倒くさそうに返した。 「リボーンはそんなことひとっことも言わなかったよ」 バレンタインの出会いから約半年。初夏にゴゾ島で特訓して以来、雷撃という技でボヴィーノのNo.1ヒットマンになったランボは、リボーンに請われて…半ば脅されてリボーンを購入した店を訪れた。 半年振りの再会にも全く嬉しそうな顔を見せない店主は、ランボの腕の中で絶賛お昼寝中のリボーンを見る。いつも寝惚けているように見える半眼は、ランボに医者のソレとは気付かせない。 「リボーンがオレを殺すなんてありえないってホント?あの時、リボーンはオレを殺して次のマスターを探すって言ってたから」 「自分で選んだマスターをそもそも殺せないし、自分でマスターを探す、なんてこともしねーぞ。待つのがプランツの仕事だからな」 癖なのか、組んだ腕の先で顎鬚を弄るのを止めずにシャマルは返す。 「で、今日は何用だ?」 「リボーンが連れてけって」 「つっても寝ててもなー、何時に起きんだよ。時間がかかるようなら出直…」 「ちゃおッス」 シャマルが白衣を脱ぎかけるとランボの腕の中で昼提灯が割れてリボーンが軽く片手を上げる。シャマルの目が細くしなる。 「おまえさん…」 「アホ牛に俺の新しいデザート教えてやってくれ」 「……OKしていいのか?」 「当たり前だろ。前のはもう飽きたんだよ」 シャマルはランボからリボーンを受け取った。見かけによらず丁寧なんだな、とランボが思うほどの手つきで受け取った。 手持ち無沙汰になったランボは丸椅子に腰を下ろし、足の間に両手をついてリボーンに、にっこり笑う。リボーンは口元で笑いながら、ボルサリーノのツバを下げる。 「…ラヴラヴかよ…」 「ちげーぞ、ヒットマン街道まっしぐらで付け上がってるだけだぜ」 「そうそう。リボーンのおかげでね」 シャマルは一度リボーンを、クッションの上に置いて、両手を広げて少し上げて呆れたジェスチャーを見せる。 「ごちそーさま」 リボーンを連れて受付の奥に消える。しばらくしてトレイに黄色いチーズケーキと琥珀色の紅茶を載せて戻ってきた。 「時間かかるからこれ食っとけ。と、アイツから」 わぁ、ありがとう!と喜んで、ランボはフォークを手にした。話し相手には困らない。ここには話せないまでも目にも麗しいプランツ・ドール達がランボの話に微笑みを返してくれる。どこから見ても普通の少年にしか見えないランボを見るシャマルの目は険しかった。 「…来ちまったか?」 「そーみてーだな。今度もちげーと思うけどな」 手術台のような場所にリボーンを座らせて、向かいの椅子にシャマルは音を立てて座る。 「それを願うな」 「同期はもう少ねーけどな。ブラディもまだいんだろ?」 「大分おとなしくなってんぜ。あっちの店任してんだ」 「お前も大概物好きだな」 「雇い主がな」 シャマルは天井を仰いだ。軋んだスプリングがキィと古い音を立てた。 「ランボにはいつ言うんだ?」 「ぴーぴーウルセーからな、言うつもりはねーな」 「それは勝手だけど、尻ぬぐいすんのはごめんだぜ」 リボーンは先のことはわからない、とばかりに口元をへの字に曲げた。 |