愛とは、同じ明日が来るのか不安になることである。



 ランボは助手席にリボーンを落ち着かせる。シャマルから渡された肌触りのいいクッションを敷き、リボーンを座らせてシートベルトを回す。
 『なるべく丁寧に扱うこと』と念を押されたが、リボーンは一向に構わないようだった。ついでに買わされた”新しいデザート”が詰められた紙袋を後部座席の足下に置く。
「なんで嘘ついたの?リボーン達は一度決めたマスターを殺せないんだろ?」
「できんだよ。俺は規格外だからな」
「あ、そうなんだ」
 シャマルが言うことはどれがほんとかわかんないなーと疑うこともせず、ランボは交差点手前のバンプに備えて、ゆっくりスピードを落とした。
 信号のない四つ角では地面が半円状に盛り上がっている為、スピードを落とさざるを得ない。無意識に、ブレーキを踏む前に周囲を見回すランボにリボーンは目元を緩ませた。安全のためというには真摯なまなざし。この瞬間も狙われ易いというのが、やっとランボの身にしみこんだようだ。
「寝てる?」
「いや」
「疲れてたら帰ろっか?今日はドライヴしたいって言ったけど」
「アホ牛。旅に出よう。てめー、イタリアから出たことねーんだろ?パスポートぐらいは持ってるだろ?」
「ほんとに!?」
 リボーンが小さく欠伸をしたのにも気付かず、ランボはボヴィーノの本部へと進路を変えた。大事な物は全部ボスに預かってもらっている。ついでに、この暖かな秋はどこに行けばいいのか教えてもらおう、とランボは大きくカーブを曲がった。

 そして訪れたのが北イタリアだった。最初はランボの長いマフラーを一緒に巻いていたが、かわいい子供用のコートを見つけたのを皮切りにおそろいのニット帽とマフラーを買った。毛糸で繋がっている手袋まで買ったのはリボーンが寝ている時だったのでまだ内緒だ。雪が降った日に見せて驚かせてやる、とランボは一人で悦に入った。
 渇いた落ち葉を踏み、焼き栗を食べ、バールの店先で子猫ちゃんの品評会をしながらエスコート方法を習い、雨が降ればコートの内側にリボーンを入れて、同じように店先で雨をしのぐ女性の胸元の猫と仲良くなった。命を狙われることも、リボーンに怒鳴られることもなく、ランボにとってはまるで天国!のような一時だったのは言うまでもない。興味のない遺跡も博識のリボーンの説明付きだと魅力溢れるものに変わることを知った。そして歩き疲れたポレンタは冷えた体にしみいるほど暖かかった。リボーンはそれらを口にすることなく、ランボの胸にもたれて、ぼんやりとランボの食事を見ていた。ミルクとデザート以外でも純粋なチョコレートやスープぐらいは飲めるリボーンに、ランボはスープを差し出した。
「あったかいよ?」
 ふるふるとリボーンは首を振った。見ようによってはぐずる赤ん坊にも見える。かわいいなぁ、とランボはニット帽を撫でるが、ぴんぴん立ったリボーンの髪の毛はその手に刺さった。それさえも可笑しくて、ランボはニット帽越しの額にキスをした。
「これ食べたらホテルに帰ろうね」
 あったかいバスに入って、ぬっくぬくのベッドで寝よう!と提案するランボにリボーンはにっこりと笑顔を見せた。






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