愛とは、同じ明日が来るのか不安になることである。



 ボヴィーノ本部に泊まった翌日の昼に街中の自宅に戻った。リボーンのミルクは本部とCODE46と自宅分散させていたが、”特別なデザート”は自宅にしか置いていなかった。昨夜から起きようとしないリボーンを椅子に座らせ、念のためにそっと瞼を押し上げると僅かながらリボーンの瞳孔が縮まったので起きたのだと知る。
「ちょっと、寝過ぎじゃない?」
 文句めいたことを言いながらも、いそいそとミルクとカフェオレの準備を始める。これをしないと一日が始まった気がしなかった。
 行儀よく座っているリボーンの前にカップを置くまでランボは異常に気付かなかった。
 ――リボーンが話していない?
「どうしたのさ、あんたがだんまりだなんて太陽が西から昇るより無いことだろ?」
 床にひざをついてリボーンを覗く。その大きな眸には自分の姿がはっきり映っているけれど、リボーンの意志は見えなかった。
「リボーン?ねぇ、リボーン!」
『揺らすな。丁寧に、最上級の丁寧さで扱え』
 シャマルの言葉はもう忘れていた。抱き上げて、叫んでいるうちに開いた瞳孔が収縮していく。
「リボーン!リボーン!!ねぇリボーン!!どうしたの!?」
 いつしか涙が頬を流れてリボーンの頬に一つ、二つ落ちてゆく。
 完全に瞳孔が縮まった。
「リボーーーン!!!!!」
 ランボの絶叫が一声、響いた。

 眸をゆらめかせて万感の思いを伝えようとした。しかし、ひたすらリボーンの名前を叫ぶランボには伝わる術は一つもなかった。
 そのうち、自分を呼ぶランボの声すら遠くなって、届かなくなった。
 見える風景がゆっくりと流れ意識が長大に伸び、あぁこれが死というものか、と腑に落ちた。
 ――ランボ、笑え。
 泣き顔を抱いて逝くのはいやだった。
 ――ランボ。
 リボーンは何を伝えるのかわからなくなり、そして急速に白い闇に包まれた。






「愛とは、次(みらい)を信じることである」に続く






ランボの行きつけのバールの「CODE46」は実在の映画からもらいました。サマンサ・モートンの非現実な存在感と上海の過去と未来が混在した猥雑な空気感、ティム・ロビンスの異邦人らしい所在無げな佇まい。そして文中でも触れているやりきれないEDとcoldplayの「clocks」があいまって、文にはできないなんともいえない作品でした。イタリアだけれどもプランツ・ドールというSFを交えた話だったので、どこかああいう雰囲気に近付きたいと思ったのですが、思っただけでした。
ドン・ボヴィーノがリボーンを呼ぶ「レイ・アミーチ」は「親愛なる小さな友達」という意味(だったらいいなぁ)です。そして、ランボとちみっこリボーンがお揃いのマフラーとニット帽はかわいいと思うの。
2008/05/06 だい。






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