転寝する場所の条件



「思ったより時間がかかったな。」
ほぼガーデンパーティーの準備が出来つつある庭園の端に立っていたリボーンは、近づいてきたディーノに声をかけた。
庭園は、準備をしているメイド達に混じって黒いスーツの人間も目立つようになってきた。会場を挟んだ反対側には、山本と獄寺の姿もある。
「仕方ないだろ、思っていた以上に強くなっていたからさ。本気出さないと、マジで死ぬって。」
「それにしても、酷い格好だな。」
「猫に咬まれてね。」
ディーノは唇の端ににじんだ血を手の甲でぬぐいながら笑った。一分の隙もなくブラックスーツを着こなしているりボーンに対して、ディーノのスーツは所々破れ、血がにじんでいるところもあるようだ。
「で、雲雀は?」
「散々むくれていたけど、さっき自分の部屋に行ったよ。一応、スーツに着替えて出てくると思う。」
「さすが師匠だな。」
「人をこき使いやがって。」
就任式に同盟ファミリーのボスとして、またツナの兄貴分として出席するために屋敷を訪れたはずなのに、玄関先でリボーンにいきなりつかまったのだ。「雲雀を探してつれて来い。」と言われて、苦笑するしかなかった。
「居場所は獄寺に聞いたんだろ?」
「ああ。ビンゴだった。」
小さいころから手のつけられない悪童として有名だった獄寺は、仕える相手と信頼できる仲間を得て一番変化していた。ツナ以外には口が悪いのは相変わらずだが、その内面の無謀さはなりを潜め、少し落ち着いた雰囲気を持つようになったのだ。その結果、守護者の中では比較的常識人となってしまった感がある。顔を合わせるとすぐに喧嘩をふっかけ格闘が始まってしまう山本や骸、会話にならない了平や年下のランボには出来ない、雲雀の相手を任されるようになったのだ。意外に面倒見のいい獄寺は、絶妙の距離感を保ちつつ雲雀の世話を焼いている形になっている…もっとも、口ではいつも文句をいっているのだが。
「雲雀の居場所なんて、今では獄寺しかわからんぞ。」
「猫同士…って感じかな?」
「猫?…まあそうかもな。」
「リボーン、本当は雲雀の居場所なんて知っているんじゃないのか?」
――あえて獄寺に面倒を見させているんじゃないのか?
雲の守護者らしく、雲雀は気まぐれだ。ツナとリボーン以外の言う事は耳を貸そうともしない。しかし、この二人以外で話の出来る人間が欲しかったのがあるのではと、ディーノは考えていた。
ディーノの流し目に、リボーンは笑って何も答えなかった。
「そういや、ツナがディーノのスーツもいつもの客室に用意してるぞ。」
「助かった!このまま就任式なんて出られないからな。」
ディーノはウインクをしてみせると、早速屋敷に向かおうとする。
「ディーノ。」
「ん?」
「あいつらは鳥同士だぞ。だから気が合うんだ。」
頭の上に疑問符を飛ばしているディーノに綺麗なウインクを返し、リボーンはパーティー会場へ歩いて行ってしまった。






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