チネ・ラヴィータ



海辺のオープンのカフェテラスで、オレンジジュースを啜りながらオレは鼻をすすった。
ジュースと同じように見事なサンセットなのに、それでも映画を思い出して涙が止まらない。
自分でもわかっているけどさ、泣きたいときは泣きたいんだよ。
映画館から抱えたままのティッシュボックスからまた一枚取り出す。リボーンはすげぇいいの使ってるよ。普通のティッシュよりずっとやらかい、何度こすっても赤くならないようなの。使い心地がよくって次々と手が伸びる。
「人の気持ちって、残るから切ないんだね」
自分で言っては鼻の奥がツーンとなって、目が熱くなった。
昔、検閲で切らざるを得なかったキス・シーン、それだけを繋いだ、彼の遺されたフィルムは、逝った男の信念とあったかい愛しさをも伝えていて、涙がまた溢れてきた。
「お前の80%は涙でできていて、後の20%は鼻水だな」
「たれ眉のくせに!」
目の前の酷いことを言う男にも負けず、オレは泣いた。
だって、涙が止まらないんだもん。仕方ないじゃん。泣きたくないけど、涙が出てくんだし、今まで散々泣き顔を見られてるリボーンに今更隠すことなんかない。これが子猫ちゃんだったら、全精力をかけて我慢するけど、リボーンなんだから我慢なんかどーでもいいし!そうだ、リボーンなんてどーでもいいんだ!!
「人の気持ちは残るって、おめー、チビの頃のことあんまり覚えてないだろ?」
「それとこれとは違うじゃん、リボーンは何も感じなかったの?」
「別に」
「人じゃないね!!アンタはやっぱりヒドイ人だよ!」
「お前にいい人って言われると虫唾が走る」
「酷すぎる!!」
「誰がヒドイんだ?」
背中からいきなり抱きこまれた。






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