片手に愛を、片手に死を。



 勢いだけで飛び出したものの、ヴァリアーの後なんて追えるわけがないのだ。携帯も置いてきたしなぁとぼやく山本はいつしか並盛中の近くまで来ていた。体にしみこんだ習性は消えないらしく、苦笑しながら金網越しに学校を眺めると見覚えのあるリーゼントが校舎の中に見えた。
「嘘、まだいるんだ!?」
 まっすぐに校庭を横切り、風紀委員の部屋へ赴くと草壁達がいた。
「なぁなぁ雲雀いる?」
 袴姿の山本に驚くこともなく草壁はソファに山本を薦める。
「わりぃ、ちょっと急いでんだ。雲雀は?」
「委員長は今、並盛を離れています。ヴァリアーのスクアーロのことですか?」
「お、さすが情報速いな。今、どこいる?」
「北の森ですね」
「そっか。ついでに足、貸してくんないかな?」
「……並盛の為ですからね。私のを使ってください」
 キーを山本に渡しながら草壁がドアの横に立つ部下に目で合図して、山本を草壁のバイクまで案内させた。時雨金時を襷で背中に括り付けて、ヘルメットを被った。フルスロットルで走り出すと景色が後ろに流れ、裾がバタバタとボディを叩いた。いつしか空に暗雲が立ちこめ、やがて地面を叩くほど強い雨が降り始めた。






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