愛かもしれない



なだらかな石畳の坂道を、耳障りな音をたててスケボーが滑っていく。うだるような暑さにランボの薄いシャツは汗でぴったりと肌に張りつく。両腕で食材いっぱいの紙袋を抱えている為、汗を拭うこともできやしない。
―リボーンは絶対に嫌がらせでやってるに違いないね!
呟くのも億劫で、心の中でわめいてみるも暑さがしのげるわけでもなく。
夏の昼下がり、歩く人影もまばらな小路に香水の香りが漂った。心当たりが当たらないように気持ちをこめて振り返った。
「こんなとこで何やってんの?」
心当たり通りの、旦那の転勤に伴ってボヴィーノを抜けた元同僚だった。
「あのね、逃げて下さいよ。僕があなたを殺さなきゃいけないって知ってるでしょ」
「両手が塞がっているあんたに何ができるっていうの?」
「こんな荷物なんかすぐ捨てちゃいますよ」
「そしたらあんたが代わりにリボーンに殺されるってわけね」
憎たらしい言葉を吐きながら、ランボの荷物を一つ持って横に並んで歩き始める。
「ここに?」
「たまたまね。リボーンを見かけたからもしかしてって思って」
「全部お見通しですか」
「ランボが私を殺せないって知ってて、ボスはあんたを指名したのよ」
「ホントに?それもお見通し?」
彼女は薄く笑った。
ランボは泣きそうになるのを我慢して声が震えないように腹に力を入れる。
「貴方の好きな方法(やり方)は?」
「幸せなうちに、幸せなままで」
「as you wish」






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