愛かもしれない



塞がれた両手で苦労しながら部屋にたどり着いた途端に脱力した。
我慢していた涙が溢れて頬に何筋も流れる。
ドアにもたれて座り込み放心しながらも彼女の言葉の意味を繰り返し考えた。

「幸せなうちに、幸せなままで」

強い力でドアが押される。我に返ると陽はもう落ちかけていた。座ったまま前進してドアが開くに任せると、うだる暑さでも汗ひとつかかない黒スーツのリボーンが涼しい顔で立っていた。
「邪魔」
一言であしらわれる。ランボが腫れた目をしていてもまるで気にしない。ボルサリーノをドア横にかけ、奥の部屋に消える。レオンが帽子からランボに飛び移る。長い舌で腫れたランボの頬を舐めると、その優しさじみた行為にランボはまた涙を溢れさせた。

「変態」
シャワーを浴び終わったリボーンが冷蔵庫を覗いて不機嫌な声でランボを呼ぶ。まぁランボが買い物から帰ってきてから何もせずただ泣いていたのは一目瞭然だが一応聞いてみる。
「何やってんだ?フロアは冷蔵庫じゃねーぞ」
「リボーンにとって幸せな時っていつ?」
「最悪な時が今なのは間違いねーな。晩飯作らねーなら追い出すぞ」
「殺したくない人を殺す時はどうしたらいいの?」
ランボは必死の形相で自分を偉そうに見下ろすリボーンに食い下がる。リボーンの黒目がちな切れ長の目が値踏みをするように細められる。
「自分を殺すんだな」
ランボを肩に担ぎ、湯を張っていたバスタブに着服のまま投げ込んだ。
「ええっ!?」
「お前が晩飯になれ」
「えええっ!?」
わめくランボの口をリボーンはキスで縫い止めた。






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