愛かもしれない



明日にパリオを控え、夜が更けても街には人が溢れていた。先週までとは大違いだ。リボーンの仕事は済んだのか在宅時間が増えた。しかし、普段はおしゃべりなランボもさすがに思考に没頭していて、会話は殆どなかった。
機械的に食事をつくり、酒を呑んで、寝た。
「アホ牛、いい加減に見つけろ。うざい」
ランボはまだ迷っていた。
「彼女の思考を追え。一緒にいたときに何が好きだったか。何の話をしていたか。そして、今何がここで行われているか。彼女の関係者の職業は何か。全部思い出せ」
リボーンを見上げるランボの目に力が戻った。すでに答えをみつけていて、リボーンの言葉で確信がついたようだ。
「最初は銃を使うな。人を殺す重みを体で受け止めろ。できないなら今すぐオレがお前を殺してやる」
「……ありがとう。リボーン…」
震えた声でランボは答えた。

翌朝、新聞を読むリボーンの後ろ姿を眺めて、ランボはリボーンがいつも黒いスーツを着ているのか理由を思いついた。これは喪服なのだ。リボーンは決して何も感じていないわけじゃない。それ相応の覚悟を持ってヒットマンをしているんだ。
「違うからな。オレはただこういうのが好きなだけだ」
「ええっ!?オレ口にしてた?」
「単純なお前が考えていることぐらい見なくても判るさ。今夜はまっすぐ帰ってくんなよ。適当に誰かみつけて一晩過ごしてから帰ってこい」
「なんで?」
「アホ牛の世話をするのがうざい」
―ひどい、と、泣きそうになる。
そして気付いた。さっきまで心が全く動いていなかったのに、泣きそうになるなんて久しぶりだ。あぁ…リボーンなりのやり方でいつものオレに戻してくれたんだ。心の底から数ミリ浮上したランボを見ても、りボーンはもう何も言わなかった。






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