屋上



「あ、やば!」
 授業中にランボがまぎれこんだらどういう展開になっても綱吉に迷惑がかかる、と獄寺はランボの後を追った。すぐ追いつくと思ったのにランボはちょこまかと獄寺の腕をかいくぐり確実に綱吉の、懐かしい教室へと走っていった。ヒヤリと冷たい視線を受けて振り向くと、向かいの校舎に風紀委員長の冷たい眼差しをみつける。厄介事がダブルどころか二乗された、と獄寺は今まで以上にランボを追う足を早める。教師に見つかるかも、という気持ちは鼻から無い。ランボを確実に捕まえるために、まず売店に向かった。この時代の円なんて持っていないけれども、当時は持っていなかった武器がある。
 毎日パンを買っていた獄寺はとびっきりの笑顔でもって 「2A山本のツケで」 とキャンディを一袋もらい、2Aの教室に先回りした。反対側の廊下から「ツナァ〜〜」と泣きながら走ってくるランボは、獄寺を見て、ひくっとしゃくり上げ加速した。獄寺は慌てず騒がず袋をランボに向けて振る。ランボは明らかに興味をひかれたようで走るのをピタと止めた。獄寺はみせつけるようにゆっくりと袋を開け、紫のキャンディを一個摘む。教室一個分離れたランボの視線が痛いほど指先に集中する。包みをほどくと赤紫の見るからにブドウ!という飴玉にランボが唾を飲み込む音が聞こえた。ゆっくりとランボに視線を戻すと、噛みつかんばかりの勢いでランボが見上げていた。瞬間移動かと思うほどの素早さだった。
「いいか、これをやるから屋上に戻るぞ」
 獄寺のささやきに、飴玉から目を離さずにランボはウンウンと頷いた。まるで馴れない動物に触るかのようにゆっくりとしゃがんでランボの体をすくい上げる。ランボはやっと手に入った飴玉を獄寺の指ごとしゃぶろうと口を大きく開けた。獄寺は成功を確信した瞬間。
「何、しているの?」
 不機嫌を塊にしたような雲雀が背後にいた。獄寺の背筋に冷たいものが下りる。
「ふ、父兄だよ」
「沢田にそんな父兄はいない。どちらかというと……」
「おまえ、もしかしてオレの名前覚えていないだろ」
 言い淀む雲雀にうっかりつっこんでトンファーで顎を突き上げられた。
「草食動物の仲間なんてどうでもいいよ。それより、事情を聞かせてもらおうか?」
 どうでもいいけど、どうでもよくねぇよ!と心の中だけで更につっこむ。とりあえず、ランボを盾にこの場を引き払おうと雲雀の顔に押しつけるようにランボを差し出す。
「授業の邪魔にならねぇように引き取りにきたんだよ。学校には何もしていない。文句はねぇだろ?」
「…;l@-o\o\\^p」
 微かに聞こえた声を振り向くと、廊下の角から麻雀の牌の模様を額に浮き上がらせた小さな少女がいた。ピンズ爆弾は既に発動している。
「ったく、てめーが一番トラブルなんだよっっ」
 獄寺はイーピンをすくうように抱き上げ屋上へと向かった。昇りきる前に入り口から空へとイーピンを投げると、花火のような爆音が起こる。それを見送った獄寺は弾みで階段を踏み外し、背後へと倒れる。ランボが、キャンディが宙に舞った。それらに両手を伸ばしたところで白い煙に包まれた。

 目を開けるとアルファロメオの前に戻っていた。獄寺は携帯を取り出してランボを呼び出した。
「おまえどこいんの?……今すぐこっちに来い。とりあえず一発殴らせろ」
 わめくランボに構わず携帯をしまうと、覚えのある感触に思わず笑ってしまった。携帯をしまったポケットには、並中マーク入りのキャンディがいくつか入り込んでいたのだ。ランボに投げつけようか、10代目に差し上げようか、それともやがて下りてくる山本に見せようか考えて、獄寺は可笑しそうに笑った。






屋上 from 「空を見上げる場所での10のお題」

アイスの日兼ランボ月間のゴクデラとランボ。
元々はランボ強化月間のお題に「屋上」というのがありまして、屋上って言ったら雲雀か山獄だろうと。
で、雲雀は「ブランコ」を予定していたのでごっくんに。どうせなら24獄とランボという最悪な二人を書こうとしたら、案の定ランボにふりまわされる24獄寺さんでした。でも結局は雲雀登場で、ごっくんの名前を覚えていないというかわいさで。たまらんね!(アレ?)24獄の前でも奔放なランボが愛しくてたまらんです。ドゥワドゥワ♪20080509/だい。






屋上のおまけ