Help me to help myself 獄寺は綱吉の嗚咽のようなしのび泣きを聞いていた。未来に飛ばされてから怒濤の勢いで新しい事柄がおしよせてきて、落ち着いたのがベッドに入ってからなのだ。「10代目…」と呟いて唇を噛む。自分が天涯孤独だということをこういう時に感謝する。いや、自分の家族がマフィア関係者ということで、どこか覚悟を決めていたことを改めて知った。綱吉の父親はともかく、母親や山本の父親は"一般人"なのだ。ボンゴレの門外顧問である家光と一緒にいるであろう奈々はきっと大丈夫だと思いたい。しかし、それよりも、剛だ。山本に時雨蒼燕流を手ほどきした人物が簡単にやられるわけがない。そんな剛が…。なにより、山本はそれを涙を見せることなく目線を逃がすことで終わらせた。とうに痛みは消えているのに右手の拳が熱い。十年後の綱吉が殺されたと聞いて激情して山本を殴った右手が。綱吉が出会ったという十年後の自分は何故その時綱吉を守りきれなかったんだろう。そして、山本は。 十年後の山本は背格好が変わっただけではなく中身もまるで別人のようだった。飄々とした部分が消え、歯噛みするほど冷静で頼りになる男になっていた。自分の拳なんて簡単に避けられる筈なのに――山本は昔からそうだ。獄寺が反応できない雲雀やスクアーロを避けることができるのに、獄寺の拳だけは避けたことがない。甘んじて受ける。 ――やっぱり山本だ。 咄嗟に起き上がった獄寺にベッドの上段の綱吉が身動ぐ気配がした。 「起こしてしまってすみません。さっき殴ったこと、山本に謝ってきます」 「…うん。行ってらっしゃい」 綱吉も涙声を隠すことに気を取られて深くはつっこんでこなかった。 |