Help me to help myself 「落ち着け、な。とにかく寝るんだ」 「ガキ扱いすんじゃねぇ」 ひた、と山本を睨みつける。獄寺の純粋な気持ちに山本の口元が歪んだ。 「――変わらねぇな。獄寺。いや、変わるわけねぇよな。十年前だってお前はお前なんだから」 山本の慈愛溢れる視線が見下すそれへと形を変えて、獄寺は瞬間鳥肌をたてた。 「ビクビクすんなって。野球バカってそう呼べよ」 「――っ!」 山本の無骨な指に頬を撫でられる。ゾクゾクとした電流めいたものがそこから発生して獄寺の意識を覆ってゆく。 「やわらかいな…」 何度もゆっくりと頬を上下されて硬直する獄寺の髪に指を差し込み、感触を確かめるように漉いた。性的な気持ちが急激に高まっていく。山本との接触をこんなに欲しがっていた自分が浅ましく感じた。そんな意味なんて無いのに。 「や…めっ…」 山本は硬直する獄寺の髪を漉きながら、頬を自分の胸へと押し当てた。服越しにも力強い鼓動を感じて自然に目を閉じる。髪を漉かれ、頭を、肩を、背中を撫でられていつしか獄寺はくったりと山本に身を預ける体勢になっていた。知らない匂いだけれども確かにそれは山本で。暗い部屋で一人で涙を堪える綱吉を思い出して、『抱きしめて差し上げれば良かったのか!』と新しい発見をしていた。 「もう眠られるだろ?」 その声に現実に戻る。思わず抱きついていた山本を見上げると全てを押し隠した山本に戻っていた。気付かず懐柔されていたこと、子供扱いされたことが悔しくて恥ずかしくて、それにのせられた自分も歯がゆくて獄寺はまたもや片手を挙げた。今度は難なくその手首を掴まれ、片手で顎を無理矢理掴まれて噛み付かれるようなキスをされた。舌を絡めとられて痺れるほど強く吸われて、歯の裏側をなぞられて、舌の表面をこすりつけられて、一気に山本のペースに巻き込まれて、その熱に包まれて、合わせているのは口だけなのに激しいセックスをしているような感触に獄寺の膝から力が抜けた。 片手で体を支えると、抵抗させる間もなくシャワーブースにつっこみシャワーコックを捻った。獄寺は頭から熱い湯をかぶせられ、呼吸を整える間にもう一度唇を蹂躙されて、滑る足下に思わず山本の首に両腕を回す。 「いい子だ」 深い傷の残る口元が呟くが水音で獄寺の耳には届かない。山本は獄寺にキスをしかけたまま細い腰に片手を忍ばせて、後ろへと指を伸ばした。そこに辿り着いたとき獄寺は意識が戻ったようにびくんと体を震わせて目を見開いた。濃い翡翠の色に山本は酷薄な笑みを見せて指先を差し入れた。 「…ふっ…ん!!…、やだっ…」 今更ということも顧みず獄寺は暴れ出すが、節がごつごつとした指がお湯をまとわりつかせながら入ってこられてもう一度背筋をのけぞらす。 「やまもっと…ちが…う」 セックスをするつもりは無かった。キスで酔っただけだった。そんな言い訳も言葉にはならず、顔を背けることであらわになる首筋を強く吸われて言葉が消える。舌をねっとりと這わされてあまりの気持ちよさに委ねてしまいそうになる。その間にも山本は指を増やしていく。知らない指に蹂躙されて獄寺は体を強張らせる。 「おま…え、だれ…」 「お前の知っている野球バカだよ」 弱いと知っているかのように厚い舌を耳の穴へねじ込み唾液を送り込む。両腕で山本の肩をつっぱるがびくともしない。 「…ちがっ…んんっ…ちがう…。やああっ!!」 ぐ、と指が増えて獄寺はのけぞり自らきつく締めてしまう。濡れたパーカーが体にまとわりついてそれが擦れてまた違う感触を沸き上がらせる。のけぞった拍子にまともに顔面にシャワーを浴び気道に湯が入り込んで咳をする。山本はキュと小気味いい音を立ててシャワーを止め、咳を続ける獄寺を自分に寄りかからせてキュイキュイと何かを捻る音を立てた。ぜいぜいと肩で息をしながら振り返る気力もない獄寺のそこに固い物が当てられて湯が溢れ出した。 |